誰でも深い音が出せます

雑記帳

'09,sept.弓について

私の弓

私の使っている弓はスネークウッドでできています。

 楽器製作家の左邦夫さんに特別に作ってもらいました。重さが95グラムあります。
 
実は長らくペルソワという1800年代初期の弓を愛用していましたが、私の奏法の変化と共に、かなりな強弓だと思っていたペルソワに、いたわりが必要だと感じるようになりました。

 もっと重く、強い弓で弾いてみたらどうだろう、という思いが膨らんではじけそうになっていたちょうどその頃、
 イタリーの弓の作家「ファウストさん」に注文してあったバロック弓(ベートーヴェンの初期の時代のスタイル)が出来てきました。
   画像の説明
  (上:ボッケリーニの時代のスタイル、ファウスト作
   下:ベートーヴェンの初期のスタイル、ファウスト作)
   画像の説明
  (上:ベートーヴェンの初期のスタイル、ファウスト作
   下:ボッケリーニの時代のスタイル、ファウスト作) 
 とにかく重めに、と頼んであったので86グラムも有り、材料も、もちろん目の揃った美しいスネーク・ウッドでバランスも良く、
 これならモダンも弾けそうだと思い、試してみたらどうでしょう!太く暖かい音が少しも楽器に負けずに響いたのです。 
 
 フェルナンブーコよりもスネーク・ウッドの方が質が高いかもしれない、スネーク・ウッドは密度も重さも有るし、スネーク・ウッドだったら目指す音が出せるはず!

 

「歴史上の存在」

 ついに、全くかってな結論に飛躍した末に、前出の「ファウストさん」に、スネークでモダンの弓を作ってもらえないか、とたずねたところ、
 「そういう弓は歴史上存在しないので、作りません!」という答えが帰ってきました。
 
 私の欲求の強さは、とっくに「歴史上の存在」を通り超していたので、それならばと今度はいつもお世話になっている、弦楽器工房の「親方」に頼んでみました。
  
 「親方」は「お金をドブに捨てるようなことをするんじゃない!」と、さっぱり取り合ってくれません。
 
 さてどうしよう?

 と考えあぐねていたその時、左さんから「楽器が出来ました!」と連絡が入りました......
 

「左さんのチェロ」

 左さんのチェロを初めて手にしたのは、この時の1年半ほど前で、7/8の楽器でした。これからチェロを始めようと彼に作ってもらった方が、どうでしょう?と持ってきたのです。
 弾いてみると、小さいサイズの割に良く響き、音色にも味が有り、とても印象に残りました。
 
 次にはその半年後に、彼自身がフルサイズのチェロをもって現れました。
 「どうでしょう?」「良く鳴りますね!......今度はモンタニャーナ・タイプの、幅の広い楽器を作ってみたらいかがでしょう!」とついけしかけてしまいました。
 
 そしてそれから1年経ったところで、ようやく前述の「出来ました!」という電話をいただいた訳です。
(弓についての話が、いつの間にか楽器のことになってしまってスミマセン!後少しで戻ります。)
 早速彼のところに出かけて行き、出来立ての楽器を弾いてみたところ、さすがに容量が大きいだけあって、低音の響きが良く、また全体に音に含みがあって味わい深く、これは弾き込むほどスケールが広がるに違いないと感じましたので、「それではこれは私がいただきます!」........

 ということで、2003年以来そのチェロを愛用しています。
 アッ!そうそう弓の話でしたね!
 

「重さに糸目はつけません!」

 楽器の行く末が決まったところで、なにげなく(下心がむき出しにならないように)スネーク・ウッドの弓がつくってもらえないと、ぐちをこぼしてみました。
 すると左さんが「スネーク・ウッドなら持っていますよ!」
”渡りに船”というのはこのことだとばかりに「それならチェロの弓を作ってみていただけませんか?」と畳み掛けると、
 
「でもねー、標準の重さにするとシナシナで使い物になりませんよ、ヴァイオリンの弓で試したことがあるんだけど」
 「重さに糸目はつけません!是非作ってみて下さい!」
 
 という訳でそれから2週間後「一応作ってみたので、見に来て下さい!」と左さん、仕事の速いこと速いこと!
 
 早速駈けつけて弾いてみると、案に違わずすごいパワーで“C”の
開放弦などはまるで別世界のよう!
 
 「100g.を少し超えちゃったんですよね!」
 
 光速は超えられない?が、100g.は超えられたんだ!簡単に!
 
 さすがにこの重さだと細かいことが少し不自由だ。
 強度を落とさずに重さを減らすには?

「完成」 

 幸いにも?この試作品は丸弓でしたので、
 「これを角に出来ませんか?』

 「丸から角にねー!........となると普通と逆だけれども....
 まあ、やってみましょう!」
 
 そして3日も立たないうちに「出来ました、95g.!」
 ソレっ!と駆けつけて弾いてみると、
「トンネルを抜けると、雪国だった!」と言うがごとし。楽々と、朗々と、深々と、鳴ること、響くこと!(注:トンネル=迷宮=迷弓)
 もう二度とトンネルには戻るまいと、スピッカートや弓元での激しい移弦やらを試してみると、意外と重さは苦にならない。むしろ大変なのは、楽器が良く響くので、左手の押さえをしっかりしないと負けてしまう。
 しかし、それこそ望むところだ!

 という訳で、2003年から左さん作のスネーク・ウッドの弓をずっと使っています!
             左さんバンザイ!

 (どんな音かは 作編曲コーナー
     または、ディスコグラフィー、参照!)
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(弦楽器シャブラングッズ)
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'09,8/6スネーク弓;その2

出来立てのスネークウッドの弓を引っさげ、
勇んで仕事場に行き仲間に音を聴いてもらう。
 一番関心を示したのはヴィオラ弾きのK君で、
「ヴィオラの弓も作ってもらえないかな?」という.....
「重さは20%増しだけど、いいんだね!」
「かまわないよ!」
 そこで早速左さんに注文した。
 
 K君は音量の豊かさでは5人力とも10人力とも言われるほどの剛のもので、これ以上いらないと思うのだが........
 
 立派に出来てきたスネークウッドの弓を難なくこなし、
意気揚々とクァルテットの練習で使ってみたら、案の定!
 「その弓は使わないでくれる!」
と言われてしまったらしい。
 どうやら『鬼に金棒』を通り越して、
『きちがいに刃物』などと言われかねない!
 
 げに恐ろしきはK君のパワーなり!
(弦楽器シャブラングッズ)
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'09,8/4ラチェザール・コストフ氏とスネーク弓

 ラチェザール・コストフ(Lachezar Kostov)氏はブルガリア生まれの俊英チェリストで、
 私はまだ彼の演奏を聴いた事は無かったのだが、
 今回の来日公演の一つ、北とぴあ さくらホールでの
ピアニスト清水愛さんとのリサイタル(’09年6月1日、
主催:You&I企画)に、
 清水佑子夫人(故清水勝男夫人、愛さんはお嬢様)から招待券をいただいたので楽しみにしていた。 
 その折、佑子夫人と何度か電話でお話ししたが、
コストフ氏の楽器があまり良くない、というよりも、
”あまりにも”良くない!と大変心配しているご様子だったので
、何かお役に立てればと、ソノリテ(ご存じない方はサイドバーの”ソノリテAS"をクリック!)をワンセットお贈りした。

 さてコンサートも近づいてきたある日,
佑子夫人から電話がかかり
「音が変わったのよ!飛ぶようになったの!」
といささか興奮ぎみのご様子!
電話口から鮮やかなチェロの音色が聞こえる。
「ラチェ、ラチェ、毛利さん!」という声に続いて
「毛利さん、大変ありがとうございました、これは、
このソノリテは素晴らしいです!」とラチェザールさん、
「本当に驚いたわ!こんな小さなネジを替えるだけで変わるのね!」

........(スミマセン!弓の話でしたね!...ソノリテの宣伝をするつもりじゃなくて....つ、つまりきっかけを話さないと先に進めないので.......すぐに本題に入ります!)
 
 さて、いよいよコンサート当日!
 ラチェ氏の演奏は冴えにさえて、聴衆もうらやましいほど盛り上がり、アンコールも5曲ほど(相当なテクニカルピースばかり)演奏し、大成功で演奏会終了。

 私もチェリストだ!ということはほとんど忘れて、楽屋を訪ねた。「あなたはチェロのマジシャンだ!」というと、少し照れたようだったが、「まだまだ先が有るさ」とも言いたいようだった。 
 彼は本当に音楽に打ち込んでいる!

 そこで私は、左さんから預かった新しいスネーク弓をおもむろに取り出し、「ちょっと試してみて!」と手渡すと、しまいかけた楽器を構えて鳴らし始めた。その瞬間楽屋の中の人はもちろん、外の人まで一体何が起こったのか、と鳴り響いた音のそばへ寄ってきた!
 いままで馴染んできた音の世界と全く別な次元が、いきなり現れたのである。
 彼も夢中になって様々なテクニカル・パターンを試した後、「重い弓は好きです!」と言う。
 以前カーネギーホールのリサイタルの時、楽器商から楽器を借り、その折に「これで弾いてごらん」と薦められた弓が97g有ったそうな!
 とにかくスネーク弓の重さを全く苦にせず、楽々と扱うのには
本当に驚くとともに、とてもうれしかった!
 
 今回の来日で、彼は清水先生が使っていた1990年代のイタリーのチェロと左さんのスネーク弓を手に入れた。
 まさに鬼に金棒だ!
 ラチェ万歳! 
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歴史上の存在について

 スネークウッドは、1800年頃までは弓の材料として”主”に使われていたようです。

 しかしこの素材の質量の高さから、例えばチェロの弓の場合、
強度を保ちつつ80g.以下という制限を超えない為には、
縦に溝を八本彫るという手間をどうしてもかけなければならなかった訳です。
 
 そこで新たに弓の材料として発見された「フェルナンブーコ」が脚光を浴びることになります。
 なにしろただ丸く削るだけで強度も、重さも、丁度良くなる素材な訳なのです。
 
 当時は弓にしても、楽器にしても、美術品としての意識はまだ希薄で、それよりも当然”道具”として認識されていたはずだと思いますが、
 もしそうだとすれば、その時代の弓の職人達が手間いらずの素材を選択するのは、しごく当たり前の事だと思います。

 つまりスネーク・ウッドがフェルナンブーコに取って代わられたのは、少なくとも音質の問題では無かったのではないか?という事です。

 皆さんはどうお考えになりますか?
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'09,nov.ソノリテAS、開発のきっかけと意図 

VT25WE

 その昔、CDが普及する少し前のLP全盛期、私はいっぱしのオーディオマニアだった。
 真空管のプリアンプ、パワーアンプ(VT25WEプッシュプル)を組み、ターンテーブルは21mm厚のガラス板に穴を空けて、真空吸着式糸ドライブ、MCカートリッジ(7、8種),カートリッジ出力の昇圧には、FRのトランスと自作バッテリードライブFETアンプ、アームは2本、FRとダイナベクターのダイナミックタイプ、スピーカーも自作の4ウエイなどなど!(この項、興味の無い方は読み飛ばして下さい!)

素材と音

 この時期の経験で面白かったのが、プレイヤー周りの素材を変えると音がころころ変わる事だった。
 糸ドライブの糸の種類、モーター・シャフトに付けるプーリーを真鍮からステンレスに変えた時、カートリッジのシェルはもちろん、シェルにカートリッジを取り付ける為のネジの材質.....,
 
 特にピアノの音の立ち上がりにこだわって、とことん追求した。
 マアマアいい時代だった。(未婚だったし!)

振動体の支え

 そこで気付いたのが、振動体はしっかり支えなければダメだということだ。
 例えばステージにグランドピアノを置く場合、手前の脚を梁の通った上に載せると音がのびる。
 そしてチェロのエンドピンも同じで、床板を踏み鳴らして梁が通ったところを見つけ、そこに立てると音が飛ぶ!という状況は何度となく経験済だ。

実験 

 それならばエンドピン自体も、素材の性質で楽器の響き方は違ってくるはずだ。
 そこで、⇩真鍮、⇩ジュラルミン↑鉄、⇩鉄のパイプ、↑鉄の2段式、↑ステンレス、⇧自分で焼き入れした鋼鉄、等々、様々な素材を試してみた。
 すると半ば予想した通り、固い程良く音が飛ぶと言う事がはっきりしたのだが、その過程で、

誕生 

 それならば「アジャスターのネジの材質」はどうなんだろうと、試行錯誤の結果が「ソノリテAS」を生み出す結果につながったのだ。 
 もちろん「クロモリ」というネジの材質が、倍音や響きの増大を促すのだが、つまみの貴石の性質も音色に微妙に影響するのが面白い。
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'10,feb.エンドピン「シングルアイ」の完成

その昔、

学生時代の事だ。
 大学のある部屋の片隅に、
半分壊れかけた折りたたみの譜面台があった。
折りたたみ式とはいえ、
頑丈に作られたその銀色の譜面台の上段は、
むくの10mm径の鉄の棒だった。

 この部分をエンドピンにしたらどうだろう?

 実を言うと、譜面台は完璧に壊れていた訳ではない、
ただ壊れかけていたのだった。

 国有財産なんだけど....

 という多少のやましさを乗り越えて、
金ノコとヤスリであっという間に仕上げてしまった。
(もう時効でしょ!)

 なにしろその時使っていたのは、
当時はやっていた10mmの鉄パイプのエンドピンで、
やたら長くて、楽器の中に残った部分が、
ある音程で共振してしまうので困っていたのだ。

 むくの鉄棒だったら共振しないだろうと、
大いなる期待とともに、
急造のエンドピンを付けて弾いてみた。

 するとどうだろう?
 どうも響きがおかしい、エンドピンの付け根に
おりがたまったように響きが濁る。

 あれっ!
わかった、重すぎるんだ!

 それからが私のエンドピン遍歴の始まりだった。

小千谷

 そうそう、トルトゥリエやロストロポーヴィチにあやかって、
曲げたエンドピンを作って使っていた時の事だ、
曲がっているのでチェロの中に引き込めないので、
ケースの中を加工して収納していたのだが、
 新潟の小千谷でのトリオのコンサートのとき、
午後にリハがありケースを開けチェロを取り出し、
エンドピンを付けようとするが、見当たらない.......
アッ東京に忘れてきた!
 リハはバロックスタイルでなんとかこなし、
あわてて金物屋を探し出して工事用の8mmの鉄棒を買い、
金ノコとヤスリを借りて、なんとか本番に間に合わせた。
 この時の素材は、見かけは悪いが意外と音は良かった。

焼き入れ

 とにかくいろいろ経験するうちに、
どうも固い方が音が立つという気がしてきた。
 焼きを入れたらきっと素晴らしい音になるに違いない、
という確信の元に、ハンズで焼き入れ用の鉄棒を手に入れ、
庭にブロックを並べ、たき火をして、
真っ赤に焼いて水にジュッと浸ける。

 なにしろ素人だ、まっすぐに仕上がるのは5本に1本。
しかしその1本を楽器に付けて弾いてみた時の感動.....

 それこそが「シングルアイ」の原点だ。
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コメント

  • ぜひこの方の弓を試してみたいと思います。 -- megumi 2009-07-24 (金) 17:11:03

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